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スポーツ選手だって「予防に勝る治療なし」

秋田労災病院リハビリ兼整形外科
関展寿

 中学校の体育で武道が義務化されました。柔道で最初に習う技は何でしょう? 私が高校の授業で最初に習ったのは「受け身」でした(厳密には技ではありませんが)。お相撲さんが最初にやる稽古は何でしょう? 「股割り」です。武道はケガが多いため、まず予防策を教えてそれから実技に入ります。

 ではバスケットボール部員に質問です。入部したときに膝の靱帯損傷を防ぐトレーニングを習いましたか? 野球部員は野球肘の予防法を教えてもらいましたか? バレーボール部では足首の捻挫予防体操をしましたか? 膝の前十字靱帯損傷は全治6カ月以上の大怪我で、最近では予防トレーニングで頻度を半分以上減らせるとの報告もあるのです。

 もちろん限られた練習時間では予防策に時間を割けない、地味な練習では競技の楽しさを教えられない、という問題もあるでしょう。それでも故障すると思うようなプレーができなくなったり、休んでいる間にレギュラー争いから後退したり、最悪の場合スポーツ引退につながることもあります。

 そして予防トレーニングは上手になることにもつながります。例えば膝の靱帯損傷予防トレーニングには体幹(腹筋・背筋・股関節)の筋トレが、野球肘予防には肩甲骨周囲の筋トレや肩・股関節の柔軟性向上が、足首の捻挫予防は足の指・足首の筋トレやバランス感覚向上が行われます。体幹トレーニングは当たり負けしない体を作り、肩・股関節の柔軟性向上はしなやかな腕の振りを生みだし、足の筋トレはしっかり地面をつかむ足腰を得ることができます。

 機会があったらプロスポーツの観戦に試合開始前の早い時間に行ってみて下さい。プロ選手がウォーミングアップに長い時間をかけていることがわかると思います。「予防に勝る治療なし」は生活習慣病だけの話ではなく、スポーツ障害にも当てはまります。チョコを食べたあとに歯磨きをするように、スポーツの前後は歯磨きならぬ体磨きを習慣づけて下さい。
(大館市 平成26年5月30掲載)
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