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糖尿病(4)-糖尿病と閉塞性動脈硬化症-(上)

秋田労災病院糖尿病・代謝内科
八代均


1.はじめに
 動脈硬化症は第4番目の糖尿病合併症である。動脈硬化性疾患に脳血管障害、虚血性心疾患および閉塞性動脈硬化症(ASO)がある。閉塞性動脈硬化症は下肢動脈が狭窄および閉塞する疾患である。閉塞性動脈硬化症は糖尿病神経障害による壊疽を合併すると下肢切断の原因となる。下肢動脈の疾患はいくつかあり総称して末梢動脈疾患(PAD)としているが、閉塞性動脈硬化症はPADの一つである。

2.糖尿病合併症としての閉塞性動脈硬化症動脈内にコレステロールが蓄積することにより動脈が狭窄し動脈硬化が形成される。高血糖により動脈が損傷されることにより動脈硬化を促進させることから、糖尿病は動脈硬化の危険因子である。足の動脈に動脈硬化が起こると動脈が狭窄あるいは閉塞し下肢の血流障害となる。下肢の血流障害による自覚症状は足が冷たい、しびれる等である。また、安静時に症状がないが歩行すると足が痛くなったり、つっぱったりして歩けなくなるが休むとまた歩けるようになる。それを間欠性跛行といい、閉塞性動脈硬化症の典型的な症状である。ただし、腰椎すべり症や腰部脊柱管狭窄症でも同様な間欠性跛行を示すことがあるから鑑別が必要である。閉塞性動脈硬化症で、動脈が完全に閉塞しても症状がなく気がつかないことがある。その原因は下肢の動脈は図のように腹部大動脈から臍の高さで左右の下肢へ行く動脈に分かれ末梢まで通っているが、自然のバイパスが形成されている。すなわち下肢の本幹の動脈が閉塞してもバイパスを通り末梢へ血液が流れることから気がつかないことがある。閉塞性動脈硬化症は、全身の動脈硬化症の一部であることから狭心症、心筋梗塞および脳卒中が高率に合併する。

3.閉塞性動脈硬化症の分類
症状から表の通り重症度はフォンテイン分類で4段階に分類されている(表1)。

4.閉塞性動脈硬化症診断のための診察および検査

1)診察
下肢の動脈、大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈および後脛骨動脈の触診を行う。狭窄あるいは閉塞があると脈拍が触知されないか弱くなる。ドップラー法で行うとより明らかになる。

2)下肢の血圧測定
下肢の血圧は上腕の血圧より高くなっている。下肢動脈が狭窄あるいは閉塞してくると血圧が低下してくる。上腕の血圧と足首の血圧の比が足関節上腕血圧比(ABI)で、正常値が0・9~1・4である。ABIが0・9未満となると閉塞性動脈硬化症が疑われる。糖尿病は動脈硬化を促進させることから、動脈硬化が強くなり足首の血圧が正しく測定されないことがある。そのときは足趾の血圧を測定する。上腕の血圧と足趾の血圧の比を足趾上腕血圧比(TBI)という。TBIは0・6以上が正常値である。平成13年から25年まで大館市立総合病院で経験した糖尿病患者に合併した閉塞性動脈硬化症患者158人でABIとTBIを同時に測定した83人について検討した。その結果を表2に示した。いずれもCTあるいはMRIで閉塞性動脈硬化症が確定した患者である。ABIが正常だったのが27/83(35・5%)、TBIが正常だったのが10/83(12・0%)であった。ABIとTBIが正常値を示したのが7/83(8・4%)であった。ABIのみでの診断率が56/83(67・5%)、ABIとTBIを測定することにより76/83(91・6%)に高くなる。糖尿病患者では動脈硬化が強いことから診断率を高めるためABIとTBIを同時に測定すべきである。秋田労災病院の糖尿病日常診療ではルーチンにABIとTBIを同時測定し、閉塞性動脈硬化症の診断率を高めている。

3)下肢動脈の超音波検査
体表に近い動脈は超音波の血流をみるモード(カラードップラー法)で動脈の閉塞あるいは血流障害を確認できる。4)CTおよびMRIによる血管撮影造影剤を使用しCT(CTA)=写真=およびMRI(MRA)により血管撮影を行う。動脈の狭窄あるいは閉塞が確認されれば閉塞性動脈硬化症が確定する。
(大館市 7月22日掲載)
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